SAPログについて(ABAPシステム)

SAPシステムではインストール後から様々な情報がログとして記録されるようになっています。
今回から複数回に渡りSAPシステムが扱う各種ログについて、ご説明して行きたいと思います。
1回目は、SAP S/4HANAなどのABAP Platformベースや SAP ERPなどのSAP NetweaverベースのSAP ABAPシステムにおける一般的なログについて説明します。
1.システムログ
SAPシステム内のすべてのシステムエラー、警告、ログオン試行失敗によるユーザロック、プロセスメッセージ、プログラムの実行エラーなどが記録されるログ。
システムログはトランザクションコード SM21 で確認することができます。
システムログはOS上にファイルで保存されていますが、ファイルの内容はそのままでは読み取れない内容となっていますので、SM21から確認する必要があります。
ファイルサイズの上限に到達すると古いログを削除して新しいログを記録していきます。
システムログファイルはインスタンス(アプリケーションサーバ)ごとに作成する『ローカルログ』と、1つのインスタンス(アプリケーションサーバ)にログを纏める『セントラルログ』の2つのタイプが選択できます。

※現在のSAP S/4HANAではセントラルログは使用できません。

2.開発者トレース
SAPシステムで問題が発生した場合に使用する技術的な情報が記録されるログ。
開発者トレースは、トランザクションコード ST11 で確認することができます。
開発者トレースファイルはSAPプロセスごとに作成れ、2つのファイルでローテーションされます。ファイルサイズの上限に到達するとファイルをスイッチしてログの記録を継続します。また、SAPシステムの再起動でもトレースファイルがスイッチされます。
トレースファイルは以下に格納されています。

SAPプロセスごとのトレースファイルは名称は以下の通りとなります。


3.ショートダンプログ
SAPプログラムが何かしらの理由で異常終了した時に記録されるログ。
ショートダンプログは、トランザクションコード ST22 で確認することができます。
システムログとは異なり、プログラム内のどの部分(行)でエラーになったかや、プログラム実行時の利用メモリ量などの詳細な情報が記録されます。
ショートダンプログはデータベース(テーブル)内に保存されます。また、ログには有効期限がなく、テーブルサイズが増加していくため、定期的に削除する必要があります。
4.ジョブログ
SAPシステム内で実行されたジョブごとに、実行結果が記録されるログ。
ジョブログは、トランザクションコード SM37 で確認することができます。
ジョブログには実行プログラム、バリアント、実行ユーザ、プログラムによって出力されるログが記録されています。
ジョブログは以下に格納されています。

SAP Note 3008195 – FAQ: Background Processing BC-CCM-BTC-*
ジョブログはジョブごとにログが作成されます。ログに有効期限はなく、ログファイルやテーブルが増加していくため、定期的にログを削除する必要があります
5.スプールログ
プリンタへの出力依頼ごとに出力データが記録されるログ。またジョブによってはスプールログにジョブの実行結果の詳細を記録する場合もあります。
スプールログはトランザクションコード SP01 / SM37 で確認することができます。
スプールログは以下のパラメータによってログの保管先を指定します。

SAP Note 20176 – Where is the spool request saved?
スプールログは出力依頼(スプール依頼)ごとにログが作成れ、デフォルトではデータベース(テーブル TST03)内に保存されます。
スプールログはスプール依頼に紐づいており、スプール依頼は一意のスプール番号が割り当てられます。
スプール番号の総数は番号範囲機能で定義されおり、スプール番号が枯渇すると新しくスプール依頼を登録することができません。
このため定期的にスプール依頼を削除して、スプール番号を再利用できるようにする必要があります。
6.セキュリティ監査ログ
SAPシステム内でのユーザの操作が記録されるログ。
セキュリティ監査ログは、トランザクションコード SM20 / RSAU_READ_LOG で確認することができます。
セキュリティ監査ログは、ユーザによるログオン試行、トランザクションの開始、プログラムの実行、ユーザマスタレコードの変更などの操作が記録されます。
セキュリティ監査ログは、SAP_BASIS 7.05 SP02までとSP03以降で有効無効、ログの格納先、ファイル名、監査ログのサイズの設定方法が変わります。
<SAP_BASIS 7.50 SP02以下>
プロファイルパラメータで指定します。

<SAP_BASIS 7.50 SP03以降>
トランザクションコード RSAU_CONFIG / SM20から設定します。(ログファイルのパスはプロファイルパラメータ「DIR_AUDIT」、「FN_AUDIT」、「FT_AUDIT」で設定します。)
セキュリティ監査ログの保存先として、「データベース」、「ファイルシステム」、「データベースおよびファイルシステム」から選択が可能となりました。
SAP Note 2191612 – FAQ | Use of Security Audit Log as of SAP NetWeaver 7.50
SAP Note 539404 – FAQ | Answers to questions about the Security Audit Log (SAP versions prior to 750)
セキュリティ監査ログをファイルシステムに記録する場合、1日のログの最大サイズを指定します。1日のログサイズの上限に到達するとログの記録が停止し、ログファイルがローテーションされるとログの記録が再開されます。
ログファイルへの記録は、以下の2パターンから選択します。
・1日に1監査ログファイルで記録
・1日に複数の監査ログファイルで記録

SAP_BASIS 7.50 SP03以降ではデフォルトでセキュリティ監査ログは有効化されます。
SAP Note 2714839 – New security settings for SAP S/4HANA 1909 (and later) and SAP BW/4HANA 2021 installations and system copies using SL Toolset 1.0
SAP Note 2713544 – New security settings during conversion to SAP S/4HANA 1909 (and later) and SAP BW/4HANA 2021 (and later) with SUM 2.0
7.移送ログ
SAPシステムで実行される全ての移送依頼の移送ステップやインポートの概要、個々の移送依頼のインポートの詳細が記録されるログ。
移送ログはトランザクションコード STMS から確認することができます。
移送ログは以下に格納されています。

移送ログは以下の種類が存在します。

8.統計ログファイル
SAPシステム内で実行された全てのプログラムの統計レコードが記録されるログ(CCMS統計レコード)。
統計ログファイルはトランザクションコード STAD/ST03/ST03N で確認することができます。
プログラム(トランザクション)の処理時間(レスポンス時間、待機時間、AP、DBでの処理時間など)、メモリの使用量、DBへのRead/Write、データ量などのシステムリソースの詳細が記録されています。

統計ログファイルは1時間に1ファイル作成され、パラメータstat/max_files、stat/as_max_filesで指定したファイル数(時間)に到達したら古いファイルが削除されて新しいファイルが作成れます。自動でローテーションされるため、手動でのハウスキープは不要となります。