SAP S/4HANA インストール紹介(第六回目:FPS適用①)
はじめに
SAP S/4HANA インストール紹介の第六回目となります。
No | 内容 |
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1 | SAP S/4HANA検証環境構成の紹介とOS設定について |
2 | SAP HANAのインストールとSAP S/4HANAとの同居の場合のメモリ設定 |
3 | SAP S/4HANAインストール(SWPM実行) |
4 | SAP S/4HANAインストール後後処理① |
5 | SAP S/4HANAインストール後後処理② |
6 | FPS適用① |
7 | FPS適用② |
8 | FPS適用後後処理 |
9 | その他対応 |
今回からSAP S/4HANA環境にFPS適用の実施となります。
FPS(Feature Package Stack)はバグ修正に加えて新機能も提供されます。
適用方法については、FPSとSPS(Support Package Stack)で大きな違いはなく、SUM(Software Upgrade Manager)で適用し、適用後に後処理を実施することで適用できます。
FPS適用
①SUMの起動
SUMを起動するためには、最初にSAP Host Agentを最新化することが推奨されています。今回はSAP HANA、SAP S/4HANAをインストール時に最新版がインストールされているため、この対応は不要になります。
以下のコマンドをrootユーザで実行してSUMを起動します。正常に起動できた場合、赤枠の内容のようにSUM ABAPへの接続先URLが表示されます。
cd <SUM展開先パス>
./SUMSTART confighostagent
上記で表示されているURLにブラウザで接続します。なお、接続に使用するブラウザの言語設定は事前に英語に設定しておかないと正常に表示されない場合があります。
接続されるとユーザIDとパスワードの入力を求められます。
ユーザIDとパスワードはFPS適用対象となるSAP S/4HANAのOSユーザ「<sid>adm」を指定します。
正常にユーザID、パスワードの認証に成功すると、以下の画面が表示されます。
②SUM(ロードマップステップ:Extraction)
[STACKFILE]の項目にメンテナンスプランナーにてダウンロードした、xmlファイル(スタック構成ファイル)のパスを指定します。
また、このxmlファイルを格納しているディレクトリにメンテナンスプランナーで同時にダウンロードしたFPSメディアも配置しておくことで、自動的にアップグレードに必要なメディアが不足していないかのチェックをしてくれる仕組みとなっています。
SUMでのFPS適用方法を選択します。今回は新規構築した環境にFPSを適用するため、一番シンプルである [Single System] を選択しています。
この場合、一番ダウンタイムは長くなりますが、新規構築している環境の場合は、ユーザ解放していないため問題ありません。
またメリットとしては、シャドウインスタンスを作成しないため、その部分の処理がなくなることにより、実質的には最短でSUM処理を完了させることができます。
事前にダウンロードしているメディアが、SAPから提供されているメディアであることをSUMに確認させるため、赤枠のURLにあるファイルをダウンロード後、xmlファイルを配置しているディレクトリにアップロードします。
[Check archive authenticity] と [Switch expert mode on] にチェックを入れて続行します。
[Customer Transport Integration] は、条件に当てはまらないのでチェックは入れません。
求められている各種ユーザIDのパスワードを入力します。
最終的に以下の画面で Information のみであれば、次のロードマップステップに進みます。
③SUM(ロードマップステップ:Configuration)
このステップでは、SUMの実行に関するパラメータを設定することが主になります。
SUMで実行する各種プロセスの使用数を設定します。今回の環境ではAP、DB共用しているため 4 に設定しています。
SUMの処理を実行するAPサーバの選択とSGENの実行方法についての選択を行います。
適用するSPの内容に間違いが無いかの確認を行います。適用するSPレベルを下げる、または定義されているSPレベルよりも上げる場合には、[Target Level]の指定を[Minimum level]以上に設定することでSUMが同時に適用を実施してくれます。
含める移送依頼は存在しないため、ここでは何も設定せずに次に進みます。
SPDD、SPAU調整移送も存在しないので、設定せずに続行します。
検証機以降も同様に構築する場合は、開発機で取得した調整移送を設定することで、SPDD、SPAU調整をマニュアル作業で実施する必要がなくなります。
最終的に以下の画面で Informationの みであれば、次のロードマップステップに進みます。
④SUM(ロードマップステップ:Checks)
このステップでは、SUMが処理を開始できる状態となっているかのチェック処理が実施されます。
特にエラーが発生しない場合は、以下の画面が表示されて、本ステップは終了となります。Information のみであれば、次のロードマップステップに進みします。
⑤SUM(ロードマップステップ:Preprocessing)
このステップではFPS適用前の処理を実施します。
今回は以下のエラーが発生したので対応を実施します。今回発生したエラーは更新レコードが残っているため削除する必要があるというエラーになります。
具体的な対応方法は、SUM画面のメッセージに記載されている通り、SAP Note 1705774に従います。
SAPGUIで接続して、トランザクション SM13 で確認すると更新レコードが残っていることが確認できましたので、残っている未更新レコードを削除します。
対応完了後、失敗したフェーズを再実行させるため、[Repeat phase <フェーズ名> to continue at the point it stopped] にチェックを入れて再開します。正常に解決されている場合は、同様のエラーが発生せずに次のフェーズに進みます。
開発ロックが求められるため、ロックを実施します。これ以降は、この環境ではSUMでのFPS適用が完了するまで、オブジェクトの修正が実施できなくなります。
SUMによるFPS適用のため、ダウンタイムに入ることがアナウンスされます。今回は新規構築している環境でユーザが作業していない環境であるため、特に対応はしませんが、ユーザに開放している環境の場合は、画面に指示されている内容を対応後に後続に進むようにします。
上記から数分後、バックアップを取得するように求められます。ユーザに解放している環境である場合、このタイミングでバックアップを取得しておかないと、SUM処理にて問題が発生し復旧したい場合に、業務処理で更新されたデータを残した状態に復元できないため、必ずバックアップを取得しておきます。
この後、SUMによるFPS適用のダウンタイムでの処理が開始されます。
ダウンタイムに入ってからのSUMの対応は、次回紹介いたします。