2024.06.21

SAPサイジングについて

今回は、SAPシステムのハードウェアサイジング(※)について、ご説明します。
SAPシステムも他の非SAPシステムと同様に、システムを導入するにあたって、サーバのハードウェアサイジングを行う必要があります。

※システム要件(機能/非機能)からシステム稼働で必要なサーバの台数、CPU数、メモリサイズや想定データ量を見積もること。

SAPシステムにおけるハードウェアサイジングは、使用する業務モジュール/アプリケーション、伝票数などの業務要件または既存SAPシステムのサーバスペックやデータ量から、SAP社のサイジングツールを使用して、必要なサーバ台数、CPU数、メモリサイズ、データ量を算出して、システム構成を検討します。

■サイジングアプローチ

SAPシステムのサイジングには、色々なタイプのサイジング手法が用意されており、それぞれのサイジング手法からSAPシステムのサイジングを行います。

● Greenfield Sizing

新規でSAPシステムを導入する場合のサイジング。
Quick Sizerやサイジングガイドラインなどのサイジングツールを使用して、システム要件から必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、データ量)を算出する。

● Brownfield Sizing

既存SAPシステムの移行/バージョンアップ/コンバージョンや利用ユーザを追加する場合のサイジング。
SAPシステムモニターやサイジングレポートなどのサイジングツールを使用して、移行後やバージョンアップ後に必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、データ量)を算出する。

● Bluefield Sizing

選択的データ移行の場合のサイジング。
サイジングレポートなどのサイジングツールを使用して、移行後に必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、データ量)を算出する。

● Delta Sizing

既存SAPシステムへ機能(アプリケーション)を追加して、拡張する場合のサイジング。
SAPシステムモニターやQuick Sizer、サイジングガイドラインなどのサイジングツールを使用して、拡張後のシステムで必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、データ量)を算出する。

● Expert Sizing

大規模なSAPシステムまたは複雑なビジネス構造や開発が必要なSAPシステムを使用する場合のサイジング。
SAP社の専門家にてサイジングを行い、必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、データ量)を算出する。

上記の通り、SAPシステムのサイジングでは、SAPシステムの導入、移行、機能拡張などによってサイジングのタイプが異なるため、システムの構築方法にあったタイプを選択してサイジングを行う必要があります。
参考: SAP Sizing

■SAPサイジングツール

次にサイジングで利用するSAP社が提供するサイジングツールについて、ご説明します。

● Quick Sizer

SAPシステムの新規導入時や利用ユーザ、機能の追加時のサイジングで使用します。
導入するSAPシステムのビジネス要件を技術要件に変換してくれます。利用するコンポーネント、処理する伝票数、利用ユーザ数からSAPS値、メモリサイズ、データ量を算出してくれます。
参考:Quick Sizer

Quick Sizerには、3つのバージョンが存在します。

HANA-base Quick Sizer

SAP HANAデータベースを使用したシステム(SAP S/4HANA、SAP BW/4HANAなど)の場合のサイジングに使用します。また、RISE with SAPのSAP S/4HANA Cloud, Private Editionのサイジングでも使用します。

HANA-base Cloud Quick Sizer

SAP社のクラウド製品(SAP S/4HANA Cloud, Public Editionなど)を使用したシステムの場合のサイジングに使用します。

Non-HANA-base Classic Quick Sizer

サイジングするシステムが非SAP HANAデータベースの場合のサイジングに使用します。

● サイジングガイドライン

Quick Sizerに存在しない業種や機能、製品をサイジングする場合に使用します 。
SAP S/4HANAやSAP ERPなどのQuick Sizerに登録されていないコンポーネントや業種、SAP BTP、SAP Integration Suite、その他製品(ADS、SAP Web Dispatcherなど)に対する一般的なサイジング方法を提供するガイド。ガイドから必要なSAPS値、メモリサイズ、データ量の算出します。
参考: Sizing Guidelines

● サイジングレポート

SAP HANAデータベースのシステム(SAP S/4HANAやSAP BW/4HANAなど)へ移行(マイレーション/コンバージョン)する場合に使用します。
ABAPレポートプログラムを実行することで、SAP HANAのSAPS値、メモリサイズ、データ量を算出してくれますが、サイジングレポートはSAPアプリケーションで必要なSAPS値、メモリサイズまでは算出してくれません。
SAP Note 1872170 – ABAP on HANA sizing report (S/4HANA, Suite on HANA…)
SAP Note 1793345 – Sizing for SAP Suite on HANA
SAP Note 2296290 – New Sizing Report for SAP BW/4HANA

● SAPシステムモニター

トランザクション DB02、ST02、ST03N、ST06、STAD、/SDF/SMON、SM04などを使用しましす。
現状のリソースの使用状況から必要なシステムリソース(CPU数、メモリサイズ、ディスクサイズ)を算出します。

● T-Shirtサイズ

単純なビジネスプロセスからシステムサイズをS、M、L、XLで分類して、それぞれのSAPS値、メモリサイズを提供します。
顧客のビジネス要件に適合していないため、システム構成の概算を算出する場合に使用されたりします。

SAPS値について

SAPS(SAP Application Performance Standard)値とは、SAPシステムにおける性能指標を表す値で、ハードウェアおよび、IaaS環境に依存しない値となり、SD(販売管理)ベンチマークテストを基に値が決定されいます。

100 SAPS = 2,000件の注文明細/時間

を完全に処理できる性能(スループット)を表しています。

SAPS値はシステムのCPUパワーを表しており、SAPS値から必要なCPU数を算出します。

■ ハードウェアの選定

サイジングツールを実行して、サイジング結果(SAPS値、メモリサイズ、データ量)を取得したら、システム構成(ハードウェア構成)を決めます。
SAPシステムでは、本番稼働で使用するシステム(本番システム)は、SAP社が認定したハードウェアを使用する必要があります。

※認定ハードウェア以外のハードウェアにSAPシステムを構築した場合、適切なサポートが受けれられない可能性があります。

オンプレミス環境にSAPシステムを構築する場合は、ハードウェアベンダーにサイジングを依頼して、ハードウェア構成を決める必要があります。
Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどのクラウド環境にSAPシステムを構築する場合は、SAP社が認定しているEC2インスタンスタイプやAzure VMタイプを使用する必要があります。

SAP HANAの認定ハードウェア一覧
SAP Note 1380654 – SAP support in IaaS environments
SAP Note 1656099 – SAP Applications on AWS: Supported DB/OS and AWS EC2 products
SAP Note 1928533 – SAP Applications on Microsoft Azure: Supported Products and Azure VM types

最後に

サイジングは、あくまでも机上計算となりますので、性能テスト、総合テストなどの各種テストを実施して、システム性能に問題がないか、本稼働後のシステムキャパシティーに問題ないかを確認することをお勧めします。
また、サイジングで利用するサイジングツールはSAPアプリケーションの要求スペックを算出するものになります。 システム運用におけるミドルウェア製品やオペレーティングシステムの必要スペックは考慮されておりません。
ハードウェア構成を検討する際は、ミドルウェア製品やオペレーティングシステムの要件も考慮するようにして下さい。

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